一括下請負の禁止

すべての建設工事においては、元請も下請であっても、また、建設業の許可業者であっても無許可業者であても、一括下請負は原則禁止(建設業法第22条)と されています。 特に、公共工事においては 「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関 する法律」の施行に伴い、一括下請負は全面的に禁止されました。 民間工事については、元請が発注者に書面で承諾を得た場合はこの限りでは ありませんが、平成3年2月5日付け建設省経構発第2号「建設産業における 生産システム合理化指針について」にも示されているとおり、一括下請負は種々の弊害を有するので、発注者の承諾が得られる場合でも極力避けるべきであるとされています。

(参考)建設業法
第22条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括
  して他人に請け負わせてはならない。
建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つては
  ならない。
3 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定め
  るもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の
  書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
4 (略)
(注)第3項に規定する「政令で定めるもの」とは、建設業法施行令第6条の3に規定する
   「共同住宅を新築する建設工事」をいいます。

「建設業者」とは、建設業の許可を受けている者をいいます。
「建設業を営む者」とは、建設業の許可を受けていない者をいいます。

 

一括下請負か否かの判断は、単に下請負業者数や下請負金額の多寡によって判断されるものではありません。その請け負った建設工事の完成について的確 な技術者が適切に配置され、元請・下請ともその責任を応分に果たすなど誠実に履行できているかどうか、個別の建設工事毎に判断されます。ただし、公共工事でなければ、建設業法第22条第3項は、一括下請負の禁止の例外を定めていますが、原則としては禁止です。なお、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の施行により、公共工事においては建設業法第22条第3項は適用されません。

 

建設業者は、その請け負った建設工事の完成について誠実に履行することが必要です。したがって、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、以下の1,2の場合に該当するときは、一括下請負に該当します。(平成28年10月14日:国土建第275号「一括請負の禁止について」より)

  1. 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
  2. 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

「実質的に関与」とは

「実質的に関与」とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいい、具体的には以下のとおりです。

  1. 発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、「施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等」として、それぞれ次に掲げる事項を全て行うことが必要です。
  2. (@)施工計画の作成:請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成、下請負人の作成した施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正
    (A)工程管理:請け負った建設工事全体の進捗確認、下請負人間の工程調整
    (B)品質管理:請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認
    (C)安全管理:安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
    (D)技術的指導:請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認、現場作業に係る実地の総括的技術指導
    (E)その他:発注者等との協議・調整、下請負人からの協議事項への判断・対応、請け負った建設工事全体のコスト管理、近隣住民への説明

  3. 上記1項以外の建設業者は、「施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等」として、それぞれ次に掲げる事項を主として行うことが必要です。
  4. (@)施工計画の作成:請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成、下請負人が作成した施工要領書等の確認、元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正

    (A)工程管理:請け負った範囲の建設工事に関する進捗確認
    (B)品質管理:請け負った範囲の建設工事に関する立会確認(原則)、元請負人への施工報告
    (C)安全管理:協議組織への参加、現場巡回への協力等請け負った範囲の建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置
    (D)技術的指導:請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守、現場作業に係る実地の技術指導
    (E)その他:自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議、下請負人からの協議事項への判断・対応、元請負人等の判断を踏まえた現場調整、請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理、施工確保のための下請負人調整
    ただし、請け負った建設工事と同一の種類の建設工事について単一の業者と下請契約を締結するものについては、以下に掲げる事項を全て行うことが必要です。
    ○ 請け負った範囲の建設工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
    ○ 自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議
    ○ 下請負人からの協議事項への判断・対応
    なお、建設業者は、建設業法第26条第1項及び第2項に基づき、工事現場における建設工事の施行上の管理をつかさどるもの(監理技術者又は主任技術者。以下単に「技術者」)を置かなければなりませんが、単に現場に技術者を置いているだけでは上記の事項を行ったことにはならず、また、現場に元請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合には、「実質的に関与」しているとはいえないことになります。

一括下請負に当たるとされる例

(1) 建築物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを1社に下請負させ、電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合
(2) 戸建住宅の新築工事において、建具工事以外のすべての建設工事を1社に下請負させ、建具工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合
(3) 戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の建設工事を一社に下請負させる場合
(4) 道路改修工事2キロメートルを請け負い、そのうちの500メートル分について施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その建設工事を1社に下請負させる場合

 

Q.元請から建材商社が下請負をして、当社が再下請負をしましたが、建材商社の主任技術者は3日に1回程度しか現場に来ません。このような施工体系の場合、一括下請負に該当しますか。
A.建材商社の工事への実質的関与が認められなければ一括下請負に該当します。 ご質問の工事で、建材商社の主任技術者が3日に1回程度しか現場に入場せず、下請である貴社が元請の管理・指導を直接受けて下請負工事を主体的に行った場合は、一括下請負に該当する可能性が高くなります。

 

Q.受注した建築工事で建築工事業の技術者が諸事情により不在になってしま い、その工事を他社に一括下請負を行った場合に建設業法違反になりますか
A.主任技術者又は監理技術者が不在になってしまった等いかなる事情又は施工途中等いかなる時点であっても、他社に一括下請負を行った場合は建設業法違反 となります。

 

なお、一括請負となるかどうかの個別の建設工事毎の判断については、当事務所では対応しておりません。所管の官庁に御相談ください。

 

 

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