個人事業主が許可取得する方法

個人事業主の場合も、建設業許可の要件(経営業務の責任者、専任技術者、資産、誠実性、欠格要件に非該当)を満たせば許可を受けることはできます。1件の請負金額が500万円(消費税込み)以上の建設工事を請け負うには、法人でも個人事業主でも建設業許可が必要になります。元請から許可を取ってほしいということで許可を取る方も多いようです。個人と法人で建設業許可の要件は変わりませんし、申請にかかる手数料や審査期間も同じです。
また、許可を取ってからは、実際に工事を請け負う際に、現場に常駐する主任技術者を置く必要がありますが、現場専任を要しない工事の場合には、個人事業主が一人で兼ねることで対応できるとされていますので問題ありません。以下に、許可の要件について、個人事業主の場合について整理してみます。

経営業務の管理責任者となるための条件

「経営業務の管理責任者」とは、建設業の経営業務を総合的に管理・執行する管理責任者のことであり、建設業に関し一定の経験を有していることが必要です。その理由については、建設業の経営は他の産業の経営とは著しく異なった特徴を有しているため、適正な建設業の経営を期待するためには、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者が最低1人は必要であるとして、要件が定められたものです。法人の場合は「常勤の役員等」のうち1人が、建設業に関する「一定の経験」を有することが必要です。そして個人の場合は「事業主本人」又は支配人登記した「支配人」のうちの1人が、建設業の経営に関する一定の経験を有することが必要です。一定の経験とは以下のどれかに該当しなければなりません。これは一般建設業と特定建設業で同じです。
@建設業業種に関する経営経験が5年以上あること。
A取得しようとする建設業業種以外の業種に関する経営経験が5年以上あること。
5年以上個人事業主として建設業を営んできたという方は多くおられると思います。しかし、その事を証明できるものが必要になります。確定申告書の控え(税務署の受領印付き)、その期間に請け負った工事の契約書や注文と請書のセット、請求書と入金の確認ができる預金通帳等などを、5年分以上そろえる必要があります。
支配人について
めったに無いケースかもしれませんが、個人事業主の場合、商業登記上の「支配人」登記された支配人は経営業務の管理責任者としての経験が認められます。
また、事業主を補佐していた親族がいれば「準ずる地位」として認められる場合があります。
東京都の場合は、

・事業主に配偶者または子供がおり、原則として、その者が確定申告の専従者になっている場合(確定申告の支払給与欄に当該専従者の氏名の記載がある場合も含む)は認められます。
※最初に、御子息等を上記の「支配人登記」しておくと、5年後または6年後に経営業務の管理責任者の資格ができますので、将来、事業引継ぎの際、許可を取り直しすることになりますが、スムースに進められるかと思います。

・事業承継(死亡又は引退)の場合、もしくは、後継者として事業を行う意思がある場合のほか、のれん分けの場合は、経営に関して5年または6年以上の補佐経験があれば、経営業務の管理責任者となることができます。

 

法人成りした場合も許可は引き継がれます!

個人で建設業許可を取った後、事業を拡大する為に法人化する場合も多いと思います。その場合、建設業許可は引き継ぐことが可能です(2020年10月から制度が改正され今まで出来なかった許可の承継が可能になりました)。その為、法人化はしばらく先を考えているけど許可はすぐに欲しい、という方はまず個人で許可が取れるかを検討される事をオススメします。

 

専任技術者となるための条件

建設業法では営業所ごとに専任技術者の配置が義務づけられているため、専任技術者がいなければ建設業許可を受けることはできません。
専任技術者の要件は一般建設業と特定建設業で異なりますのでご注意下さい。
(関連:一般建設業と特定建設業の違いについて)

 

一般建設業の場合

一般建設業の場合は、以下のいずれかに該当することが必要です。

  1. 一定の国家資格を有する者
  2. 許可を得ようとする建設業の実務経験
  3.  ・大学または高等専門学校の指定学科卒業者(3年以上の実務経験)
     ・高等学校又は中等教育学校の指定学科卒業者(5年以上の実務経験)
     ・専修学校の専門士又は高度専門士を称する者で指定学科卒業者(3年以上の実務経験)
     ・専修学校の指定学科卒業者(5年以上の実務経験)
     ・10年以上の実務経験者
     ・複数業種について一定期間実務経験を有する者

  4. その他
  5. 海外での工事実務経験を有する者で、国土交通大臣の個別審査を受けて認定を受けた者

特定建設業の場合

特定建設業の場合は、以下のいずれかに該当することが必要です。

  1. 一定の国家資格を有する者
  2. 一般建設業の専任技術者となりうる技術資格要件を有し、かつ、許可を受けようとする建設業の建設工事に関して、発注者から直接請負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものについて2年以上の指導監督的な実務の経験を有する者
  3. ※指導監督的な実務の経験とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。

     

    「特定建設業」許可申請の場合は、上記の「指定建設業」に関しては、指導監督的な実務経験によって専任技術者にはなることはできません。一級の国家資格・技術士資格・大臣認定が必要です。
     ※「指定建設業」とは、土木工事業、建設工事業、電気工事業、管工事業、
      鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の計7業種です。

     

    10年以上の実務経験については、実務経験とは許可を受けようとする建設業に関する技術上の経験をいいますが、その事を証明できるものが必要になります。大事な点は、「許可を受けようとする建設業に関する」というところで、例えば、内装仕上工事業を申請する場合は、内装仕上工事の技術上の経験でなければなりません。大工工事や防水工事の経験では認められません。当たり前と思われるかもしれませんが、以外と難しいことがあるのです。どういうことかというと、この実務経験を証明するためには、確定申告書の控え(税務署の受領印付き)、その期間に請け負った工事の契約書や注文と請書のセット、見積書、請求書と入金の確認ができる預金通帳等などを、10年分以上そろえる必要があります。そしてその資料に記載されている工事件名や、見積の内容などから工事業種が明確に判明しなければ認めてもらえません。
    現在、個人事業主で活動されている方で、すぐに建設業許可を取得する予定がなくても確定申告書・原本や工事請負契約書、注文書などは廃棄せずに保管しておくことをお薦めします。

     

    「特定建設業」許可申請の場合は、上記の「指定建設業」に関しては、実務経験によって専任技術者にはなることはできません。
    「実務経験」とは、許可を受けようとする建設工事(業種)に関する技術上の経験をいいます。具体的には、建設工事の施工を指揮、監督した経験及び実 際に建設工事の施工に携わった経験をいいます。これには、 現場監督技術者としての経験も含まれます が 、工事現場の単なる雑務や事務の仕事は 、 実務経験に含まれません。
    附帯工事(請負契約の中で、主目的となる業種の工事に含まれる、別業種の工事)の経験は、実務経験の証明に使うことはできません。
    電気工事又は消防施設工事における無資格者の実務経験は、電気工事士法及び消防法の規定により、原則として認められません。

     

    人工(常用工事)請けが多い場合は許可は難しくなる

    見積書や請求書に「人工」で金額が記載されている場合もあるかと思いますが、1日いくらで何日分で合計いくらというようなものになりますが、このような人工請けについては、建設工事の請負とはなりません。経営業務の管理責任者の経験とは認めてもらえませんので、注意が必要です。ただし、専任技術者の実務経験としては認めてもらえます。(他県では扱いが異なる場合があります)この点も注意が必要です。なお、個人事業主が1人親方として人工で工事の仕事を行っても構いませんが、従業員がいる場合に、従業員を人工出しとして派遣するのは、問題がありますのでこの点も注意が必要です。

     

    営業所について

    自宅に営業所を置いている自宅兼営業所の場合も多いかと思います。この場合、居住部分とは明確に区分された事務室が設けられている必要があります。

    営業所が2箇所以上ある場合

    個人事業主の場合に、営業所が2以上の都道府県にまたがる場合は、確定申告は、住所地の税務暑に行うのですが、申告書に記載する事業所所在地の都道府県税事務所から課税され、納税します。納税証明書は納税した都道府県税事務所で発行されます。
    東京都の場合に知事許可を申請する場合は、都税事務所発行の個人事業税納税証明書が必要になります。
    ※ 新規申請の場合は、都税事務所に提出した「事業開始等申告書」の写しを提出します。

     

    1人親方の場合

    一人親方とは、個人事業主のうち専門的な技術を持ち熟練を要する仕事でその能力を駆使した現場の作業も行う職人のことで、建設業では、大工工事業・左官工事業などを営む職人をいいます。
    これらの一人親方も建設業の許可は、要件を満たせば取得できます。
    なお、許可の要件にはなっていませんが、労災保険に関しては、1人親方は労働者ではないので、労災保険は適用されませんが、本人の申し込みにより加入条件を満たせば、労災保険の特別加入の制度があります。

     

    屋号の使用について

    多くの個人事業主の方は、屋号をお使いだと思います。屋号は開業時に税務署に提出する開業届に記載します。しかし、建設業の許可を取る場合には、通常、この屋号を商号、名称として申請はできないので注意が必要です。通常は、個人名が商号、名称となります。
    屋号を商号、名称として建設業許可を申請する方法もありますが、ケースとしては少ないですね。
    個人で屋号を登記することができます。登記の費用が3万円かかりますが、登記された屋号であれば、商号、名称として申請が可能です。
    建設業の許可を取ると、許可票(いわゆる金看板です)を事務所に掲示しなければなりませんが、ここには、商号、代表者の氏名、許可番号、許可年月日などを記載するのですが、登記された屋号で許可の取得すれば、許可票に屋号を表記することができるようになります。
    許可票は、横40cm以上縦35cm以上の大きさで堅ろうなもので作成します。
    なお、許可を取得すると、元請となる場合には、工事現場にも指定の内容を記載した許可票を掲示する義務がありますので、ご注意ください。
    許可票の掲示の詳細は、標識の掲示を参照ください。

     

    主任技術者の配置について

    建設業許可を取った業者は、請け負った工事の現場に主任技術者を配置しなければなりません(どんなに低い金額の工事でも配置義務があります)。そうなると1人親方(従業員がいない)のような場合は、親方本人が主任技術者として現場に出るしかありませんが、経営業務の管理責任者や専任技術者も親方が兼任しているわけですので、そういう意味では営業所に常勤で業務を行っているいなければならず、現場に出るという事は原則、認められてはいません。ただそうなると、1人親方の許可業者は実質工事を請け負えなくなるので、例外的に、下記の条件を全て満たした工事に限っては、経営業務の管理責任者や専任技術者を兼務しながらも、主任技術者として現場に出る事が認められています。

    ・勤務する営業所において請負契約が締結された工事であること
    ・営業所と工事現場の距離が近い(現場の職務も営業所の職務もできる距離で、かつ営業所と
     現場の間で常時連絡をとれる体制にあること
    ・「公共性の高い工事で、請負代金が3,500万円(建築一式の場合は7,000万円)以上」でない
     工事であること

    1人親方の場合、許可取得後は、この条件を満たした工事しか基本的には請けられないのですが、特に3,500万円以上の工事は請負えないという点は要注意です。許可を取ったのだから上限が無いということにはなりません。なお、請負金額の上限ということと類似ではありますが、1人親方に限らず、下請代金の総額が4,000万円以上となる場合は、一般建設業ではなく特定建設業の許可が必要です。
    主任技術者についてもっと知りたい方は「主任技術者・監理技術者とは」を参照下さい。

    建設業許可を個人事業主が取る方法まとめ

    以上、ここまで個人事業主が建設業許可を取る方法について紹介しました。
    建設業許可は、従業員がいないいわゆる1人親方でも取る事ができます。しかし、個人事業主が許可を取ろうとすると非常に苦労することも多いです。もし本記事を読んだ上で、申請に関して心配な点がある場合は、専門の行政書士に相談する事をお勧めします。

     

     

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