専任技術者の要件緩和について
令和5年7月1日施行の建設業法施行規則の改正により、一般建設業許可の営業所専任技術者の要件が緩和されました。
この改正により、令和3年4月1日施行の技術検定制度の改正でできた「施工管理技士補」という資格について、資格取得後の一定期間の実務経験をもって当該工事業種の営業所専任技術者になることができる工事業種が新たに設定されました。
また、従前からの施工管理技士については、従前の営業所専任技術者になることができる工事業種に加えて、施工管理技士技術検定合格後の一定期間の実務経験をもって当該工事業種の営業所専任技術者になることができる工事業種が追加されました。
以下に具体例で説明します。
「2級建築施工管理技士補」と「2級建築施工管理技士(躯体)」の資格の例
【1】「2級建築施工管理技士補」の技術検定合格後5年以上の実務経験により一般建設業許可
の専任技術者として認められる工事業種
・大工工事業
・とび・土工工事業
・タイル・れんが・ブロック工事業
・鋼構造物工事業
・鉄筋工事業
・解体工事業
・左官工事業 ・石工事業
・屋根工事業 ・板金工事業
・ガラス工事業 ・塗装工事業
・防水工事業 ・内装仕上工事業
・機械器具設置工事業
・熱絶縁工事業 ・建具工事業
・水道施設工事業 ・消防施設工事業
・清掃施設工事業
逆に言うと、一般建設業許可の専任技術者として認められない工事業種は、「指定工事業」の7業種及び電気通信工事業、しゅんせつ工事業、さく井工事業になります。
※「指定工事業」とは以下の7業種になります。
・土木工事業 ・建築工事業 ・電気工事業 ・管工事業 ・鋼構造物工事業
・舗装工事業 ・造園工事業
【2】「2級建築施工管理技士(躯体)」の資格で一般建設業許可の専任技術者として認められ
る工事業種
@従前から認められている業種
(実務経験不要)
・大工工事業
・とび・土工工事業
・タイル・れんが・ブロック工事業
・鋼構造物工事業
・鉄筋工事業
・解体工事業
A技術検定合格後の5年以上の実務経験に
より認められる工事業種
(令和5年7月1日施行により追加されたもの)
・左官工事業 ・石工事業
・屋根工事業 ・板金工事業
・ガラス工事業 ・塗装工事業
・防水工事業 ・内装仕上工事業
・機械器具設置工事業
・熱絶縁工事業 ・建具工事業
・水道施設工事業 ・消防施設工事業
・清掃施設工事業
少しややこしい内容になりますが、順序立てて説明します。
施工管理技士補について
まず、施工管理技士補という資格ですが、
要件緩和の内容については、施行管理技術検定合格者について、従前の扱いに加えて、合格後の工事業種に関する一定年数の実務経験をもって、当該工事業種について一般建設業許可の営業所専任技術者になることができるようになりました。
※指定建設業と電気通信工事業は除きます。
具体的な内容は、以下のとおりです。
@技術検定合格者を指定学科卒業者と同等とみなし(1級1次合格者を大学指定学
科卒業者と同等、2級1次合格者を高校指定学科卒業者と同等とみなす)、第一次
検定合格後に一定期間(指定学科卒と同等)の実務経験を有する者が当該専任技
術者として認められる。(指定建設業と電気通信工事業は除きます)
A特定建設業許可の営業所専任技術者要件※ 、建設工事において配置する主任技術者・監理技術者※
も同様の扱いとなります。 ※指定建設業は除く
1級1次合格者には「1級施工管理技士補」の資格が与えられます。
2級1次合格者には「2級施工管理技士補」の資格が与えられます。
建設業における中長期的な担い手の確保・育成を図るため、建設業法に基づく技術検定
の受検資格の見直しや、一般建設業許可の営業所専任技術者の要件の緩和等を行う
[2] 令和5年7月1日(土)【一般建設業許可の営業所専任技術者の要件の緩和】
[3] 令和6年4月1日(月)【技術検定の受検資格の見直し】
一般建設業許可の営業所専任技術者の要件の緩和
1級の第1次検定合格者を大学指定学科※卒業者と同等とみなし、
また、2級の第1次検定合格者を高校指定学科※卒業者と同等とみなすこととする。
※指定学科とは、建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)第1条に掲げる学科をいい、建築学や土木工学に関する学科等がこれに該当します。
一般建設業の許可を受けるには、営業所毎に専任の技術者の配置が求められています。
○今般、技術検定合格者を指定学科卒業者と同等(1級1次合格者を大学指定学科卒業者と同等、2級1次合格者を
高校指定学科卒業者と同等)とみなし、第一次検定合格後に一定期間(指定学科卒と同等)の実務経験を
有する者が当該専任技術者として認められることとなりました。(指定建設業と電気通信工事業は除く)
○また、特定建設業許可の営業所専任技術者要件※ 、建設工事において配置する主任技術者・監理技術者※
も同様の扱いとなります。 ※指定建設業は除く
[3] 令和6年4月1日(月)【技術検定の受検資格の見直し】
技術検定の受検資格の見直し
技術検定合格者の技術力の水準を維持しつつ技術検定制度の合理化を図ることとし、
令和6年度以降の受検資格を以下のとおりとする。
・1級の第1次検定は、19歳以上(当該年度末時点)であれば受検可能
・2級の第1次検定は、17歳以上(当該年度末時点)であれば受検可能(変更なし)
・1級及び2級の第2次検定は、第1次検定合格後の一定期間の実務経験で受検可能
(なお、令和10年度までの間は、制度改正前の受検資格要件による2次検定受検が
可能)
令和5年7月1日の建設業法施行規則の改正。ポイントは、専任技術者の要件緩和。許可が取れるかも?
建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)の一部を改正する政令(令和5年国土交通省令第43号)が公布され、令和5年7月1日より建設業許可における専任技術者の要件緩和などの改正が行われました。
内容が少し複雑ですので、端的に解説していきたいと思います。
これまでの専任技術者の要件では、施工管理技士の合格者(2次試験合格者)でしか、要件を満たせませんでした。これが、1次試験合格者(いわゆる技士補)でも合格してから実務経験が3〜5年あれば、指定された業種の「専任技術者」を満たすことができるようになります。(ただし、建設機械施工技士補、電気通信工事施工管理技士補については、今回の改正では、対象から除かれました。)
年々、2次試験の難易度が上昇していることを考えれば、非常にうれしい改正といえます。
2次試験が受からず、実務経験10年を証明できるまで待とうとしていた方については、合格後実務経験3〜5年に短縮できる訳ですから、非常にうれしい改正といえます。
※ちなみに、技士補の制度が令和3年4月1日から開始されましたので、令和6年8月頃から技士補で「専任技術者」となれる方がではじめるということになります。
施工管理技士(2次試験合格者)
今回の改正は、すでに施工管理技士の合格者(2次試験合格者)についても、恩恵を受けられます。
施工管理技士を取得すれば、「専任技術者」として1つ又は複数業種について許可の要件を満たすことが可能です。しかし、その他の業種を追加取得したいと考えるならば、資格を新たに取得するか、実務経験10年を積んで取得するしかありませんでした。
この点が改正されます。
これまでの建設業許可において、お持ちの施工管理技士で取得できる業種に加えて、指定された業種を資格の合格後実務経験3〜5年で追加取得することができるようになったのです。(ただし、建設機械施工技士、電気通信工事施工管理技士については、今回の改正では、該当しません。)
※建設機械施工技士補・電気通信工事施工管理技士補は対象外です。
業種を追加したいと考えていた方にとっては、朗報です。
現場の配置技術者
専任技術者の要件が緩和されたことで、同時に配置技術者(主任技術者・監理技術者)制度も緩和されました。これにより、配置技術者として配置できる人材が増えるわけですから、適法な人材配置という点でも、恩恵をうけることになります。
指定学科大卒・高卒の方とは、異なる点があるのです。
それは、1次試験合格者(技士も含めて)取得できる業種に指定建設業「建築一式・土木一式・電気・管工・鋼構造物・舗装・造園」及び「電気通信」工事が含まれないということです。
まとめ
資格の重要性
この度の改正では、技士を含めた1次試験合格者に対する実務経験期間の短縮がおこなわれました。
これにより、建設業許可のハードルは若干ですが下げられました。
何より、建設業における資格の重要性を感じる改正といえます。積極的な資格の取得をお勧めします。
新制度「技士補」とは
これまで行われていた技術検定制度では、「学科試験」と「実地試験」の両方に合格することで「〇級□□施工管理技士」の資格を取得できていました。学科試験に合格しても実地試験が不合格だと何の資格も得られなかったのです。
ところが、令和3年4月1日からは学科試験と実地試験の名称が「第一次検定」と「第二次検定」に変わり、「第一次検定」に合格した時点で「〇級□□施工管理技士補」の資格を取得できるようになりました。
【1級・2級】施工管理技士補の現場での役割り
2級の施工管理技士補は、段階では現場での実務的な役割はありませんが、1級の施工管理技士補を取得した場合は、監理技術者の補佐ができるようになります。
新制度「技士補」の特徴
この「技士補」の特徴的なところは、今までは1級の施工管理技士試験に合格したのちに、監理技術者講習を受講し監理技術者となった技術者が専任で配置されなければならなかった工事現場に、技士補を専任の技術者として置くことで監理技術者が2つの工事現場を兼任できるようになることです。
つまり、新制度は建設現場で叫ばれている「技術者の不足」を補うことができる制度として、期待されているのです。
学科試験が「第一次検定」、実地試験が「第二次検定」と変更になっています。
そして、第一次検定に合格した者に技士補の資格が与えられることになりました。
技士補の資格を取得すると、以降は第二次検定の合格のみで施工管理技士の資格を取得できます。
技士補の新設による変更点とメリット
技士補という資格ができることにより、これまでの建設現場で必要だった「監理技術者」の配置や資格試験が大きく変わっていきます。
監理技術者が現場を“兼任”できるようになった
改正前は、特定建設業の資格を保有している特定建設業者が元請けとして総額4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円)の工事を受注した場合、工事現場ごとに専任で監理技術者の配置が必要でした。
これは公共工事や民間工事関係なく、元請けとして請け負った金額が判断基準となりますので、ほとんどの建設工事が該当します。
建設現場ごとに1級の施工管理技士試験に合格した監理技術者の配置が必要なので、特定建設業者にとっては人材の確保が大きな問題でした。
しかし、技士補を専任で配置すれば、監理技術者は現場を兼任できるようになります。
単純計算すると、ひとりの監理技術者が2倍の工事現場を担当することができるようになるため、人材不足の解消・軽減になると考えられています。
監理技術者の配置義務の緩和について
監理技術者の配置義務にも変更があります。
監理技術者は2現場まで配置することができますが、それは「監理技術者の職務を補佐する者として政令で定める者を現場に専任で置いた場合」という条件付きです。
この「監理技術者の職務を補佐する者として政令で定める者」が技士補なのです。
経営事項審査の加点対象になった
経営事項審査とは、建築企業が公共工事の入札に参加する際に受けなくてはいけない審査です。今回の改正では、1級の技士補も経営事項審査の加点対象になったため、資格を持っていれば就職の際に有利にはたらく可能性もあります。
技術検定制度の改正(令和3年4月1日施行)
「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第三十号)が、令和元年6月12日に公布され、技術検定制度の見直し(建設業法第27条関係)に係る規定については令和3年4月1日に施行されます。これに伴い技術検定制度が大きく変わり、令和3年度より新制度の下で試験が行われます。
これまでの技術検定では、学科試験と実地試験の合格者を「技士」として称号を付与しておりましたが、今回の建設業法の改正により、第一次検定と第二次検定に再編成を行い、第一次検定の合格者を「技士補」(今回の改正により新設)、第一次検定及び第二次検定の両方の合格者に「技士」の称号を付与することとしました。
一方で、建設業においては、長時間労働が常態化していることから、工期の適正化などを通じた「建設業の働き方改革」を促進する必要があります。
また、現場の急速な高齢化と若者離れが進んでいることから、限りある人材の有効活用などを通じた「建設現場の生産性の向上」を促進する必要があります。
さらに、平時におけるインフラの整備のみならず、災害時においてその地域における復旧・復興を担うなど「地域の守り手」として活躍する建設業者が今後とも活躍し続けることができるよう事業環境を確保する必要があります。
このため、「建設業の働き方改革の促進」「建設現場の生産性の向上」「持続可能な事業環境の確保」の観点から、建設業法・入契法を改正しました。
○長時間労働の是正(工期の適正化等)
・中央建設業審議会が、工期に関する基準を作成・勧告。また、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、違反者には国土交通大臣等から勧告等を実施。
○現場の処遇改善
・建設業許可の基準を見直し、社会保険への加入を要件化。
・下請代金のうち、労務費相当分については現金払い。
建設現場の生産性の向上
○限りある人材の有効活用と若者の入職促進
・工事現場の技術者に関する規制を合理化。
- 元請の監理技術者に関し、これを補佐する制度を創設し、技士補がいる場合は複数現場の兼任を容認。
- 下請の主任技術者に関し、一定未満の工事金額等の要件を満たす場合は設置を不要化。
○建設工事の施工の効率化の促進のための環境整備
・建設業者が工場製品等の資材の積極活用を通じて生産性を向上できるよう、資材の欠陥に伴い施工不良が生じた場合、建設業者等への指示に併せて、国土交通大臣等は、建設資材製造業者に対して改善勧告・命令できる仕組みを構築。
持続可能な事業環境の確保
○経営業務に関する多様な人材確保等に資するよう、経営業務管理責任者に関する規制を合理化(※)。
※建設業経営に関し過去5年以上の経験者が役員にいないと許可が得られないとする現行の規制を見直し、今後は、事業者全体として適切な経営管理責任体制を有することを求めることとする。
○合併・事業譲渡等に際し、事前認可の手続きにより円滑に事業承継できる仕組みを構築。