工事経歴書作成時の注意点

工事経歴書は建設業の新規許可の申請や決算変更届を行う際、必要な添付書類の一つです。
工事経歴書には、許可申請直前1年間における、申請する工事業種について、主な建設工事の実績(完成工事および着工した未成工事)を作成します。複数の業種がある場合には、業種ごとに作成します。
ここでは、工事経歴書の作成のポイントを解説しています。

工事経歴書作成のポイント

工事経歴書作成のポイントは、以下の5点になります。

1.業種ごとにそれぞれ経歴暑を作成する。
2.実績がない業種では、「なし」と記載する。
3.工事の種類は、請負工事ごとに判断する
 (1件の請負工事を複数工事に分割しない)。
4.業種追加の場合は、追加する業種のみ作成する。
5.経営事項審査を受ける場合は、作成方法が異なる。

経営事項審査を受けない場合

主な完成工事(10件程度)について、請負代金の額の大きい順に記載し、それに続けて、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載する。

経営事項審査を受ける場合

@元請工事の完成工事の請負代金の合計額の概ね7割を超えるところまで請負代金の額の大きい順に記載する。
Aそれに続けて、@以外の元請工事及び下請工事の完成工事の請負代金の合計額の概ね7割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載する。
 ※@、Aについては、「軽微な建設工事」については10件まで記載する。
Bさらに、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載する。
C請負代金は、消費税抜きで記載する。(免税事業者は税込みで作成。東京都の場合)
D「土木一式工事」の場合、請負代金のうち「PC」、
「とび・土工・コンクリート工事」の場合は「法面処理」、
「鋼構造物工事」の場合は「鋼橋上部」の内訳を記載します。
 ※「PC」:プレストレストコンクリート構造物工事。
 ※「完成工事」:申請または届出の日の属する事業年度の前年度に完成した建設工事。
   「未成工事」:申請または届出の日の属する事業年度の全年度において完成していない建設工事。

記載時の注意点

1.工事名および注文者

@個人の氏名が特定されることのないようにします。
  (例:注文者「X」、工事名:「A足場仮設工事」など)
A工事名はできるだけ契約書の工事名と同じ記載としますが、施工場所、内容を具体的に記載します。工事名が改修工事などでは、幾くつもの業種に係るかどうか、実際の工事の内容の確認をします。

2.元請と下請

注文主(施主)から直接請負った工事が元請、他の建設業者を通して請負った工事が下請です。

3.配置技術者

元請、下請に関わらず工事現場には必ず技術者を配置しなければなりません。
一般建設業であれば主任技術者、特定建設業許可で4,000万円以上の下請契約を行う場合は監理技術者を配置します。
経審を受ける場合の工事経歴書は複雑であり、各都道府県によって多少異なりますので、各ホームページ等で記載要領をご確認下さい。

 

工事経歴書(様式第2 号)の記入に当たり、下請工事を土木一式工事や建築一式工事として分類することができますか?
一式工事とは、QA25 のとおり、総合的な企画・指導・調整のもとに建築物や土木工作物を作ることとされており、原則として元請で請け負った工事が対象となります。
このことから、発注者の書面による承諾を得て、元請負人から一括して工事を請け負った場合((注)共同住宅を新築する建設工事については一括下請を行うことはできない)を除き、下請で施工した工事を一式工事として分類する事例は極めて少ないと考えます。また、一括下請負は公共工事については一切できません。
よって、下請工事については、一式工事以外の専門工事に分類するか、その他の建設工事に分類することになります。

 

工事経歴書に記載できない業務

工事経歴書には、建設業法上の建設工事に当たらない業務を工事として含めてしまわないよう注意が必要です。建設工事に当たらない業務を含めるkとは虚偽申請となって処分の対象となる可能性があります。では、どのような業務に留意すべきでしょうか?
直3完成工事高の記事で、「工事経歴書に記載できない業務とは?」で解説している内容は、そのまま工事経歴書に含めることができない業務ということになります。

 

建設工事に該当しない業務は多々ありますので、これを定義するのは難しいですが、建設工事に該当する業務の定義は建設業法に規定されていますので、この規定に該当しない業務については、同じ工事現場で行う作業であっても、あるいは建設業と類似に見えるとしても、建設工事には該当しないということになります。
建設工事に該当する業務について、定義のポイントは、
@名目に関わらず、実態として、報酬を得て建設工事の完成を目的とする請負契約であること。
A土木・建築工事、設備工事であって建設業法に例示される「29の工事業種」に該当すること。
の2点です。

※請け負うとは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約」を言います。(民法第632条)

29の工事業種の詳細は「建設工事の種類」の記事を参照してください。

 

これらに該当しなければ、類似業務であっても建設業法上の建設工事には当たりません。
以下に、同じ工事現場の業務であったり、請負と紛らわしい契約であったりしても、建設工事に該当しない業務の例を記載します。
発注者から「草刈工事」や「道路清掃工事」、「点検工事」など工事という名称で発注されたものであっても、これらの業務は工事に該当しませんので、工事の施工実績として記載できません。このような業務の実績については工事経歴書に記載できませんので、兼業の業務として扱うことになります。

 

1.請負契約でないもの
・自社で施工する建売用住宅の建築
  (自社で施工するので請負ではありません)
・自社の建物の建築・修繕工事
・建設資材、建売住宅の販売
 (売買契約であって、請負契約ではありません)
・常用工事・人工出し
※常用(常傭)工事: 一日工事に参加するといくらもらえるかという業務委託契約。単価契約。

(常用工事・人工出しは、建設現場への労働者派遣に該当し、建設工事の請負ではありません。なお、建設工事に労働者を派遣することを禁止している「労働者派遣法」に抵触するおそれがあります)

 

注)建設資材などの物品の販売であっても単なる物品や機器の販売等ではなく、据付工事を含む契約である場合は、発注者に対して建設工事の完成を請け負うような契約解され、建設業許可が必要となる場合があります。

 

2.「建設業法に例示される29の工事業種」に該当しないもの
・工事現場の警備
・樹木の伐採・剪定、草刈り
・道路清掃
・設備や機器の運転管理や保守点検業務
・測量や調査(土壌試験、ボーリング調査を伴う土壌分析、家屋調査等)
・建設機械や土砂などの運搬業務
 (重量物の運搬・配置はどび土工工事)
・船舶や航空機など土地に定着しない工作物の建造
・建設資材(生コン、ブロック等)の納入
・工事現場の養生(換気扇にビニールをかぶせる、窓にシートを張るなど。
 注)「はつり工事」は「とび・土工工事」に該当します。
・トラッククレーンやコンクリートポンプ車リース
 (ただし、オペレータ付きリースは工事に該当)

 

請負代金が500万円以上の施工実績がある場合は?

建設業の許可を受けていない場合には、軽微な工事しか請負うことはできません。
 「軽微な工事」についてはこちら
従いまして、500万円以上の金額の工事(※)を請け負うことは違法です。
(※)建築一式工事」の場合は、1,500万円以上の工事で延べ面積が150u未満の木造住宅。
このような施工実績があった場合は、どうすればよいでしょうか?
もちろん、もちろん、実績として施工しているのに、記載しないというような不正な申請を行うことはできません。そのこと自体が格要件にも該当してしまいます。
東京都の場合は、新規申請を行う場合には、悪質な場合を除けば、新規申請をするのだからということで、あまり厳しい対応はしていないようですが、注意は必要です。

まとめ

工事経歴書には、許可申請直前1年間における、申請する工事業種について、主な建設工事の実績(完成工事および着工した未成工事)を作成します。経営事項審査を受ける場合と受けない場合で作成方法が異なります。また建設工事に該当しない点検、草刈りなどの業務を記入できません。これらは兼業の扱いになるからです。特に、経営事項審査において、建設工事に該当しない業務を含めていると虚偽申請を疑われるので、建設工事に該当する業務か、建設業の営業なのかを常に注意していることが必要になってきます。

 

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