経審の評点の改正について
平成20年4月に抜本的に大改正が行われて、現行の制度の骨格となりました。この記事では、これ以降の改正について解説します。
平成23年4月改正について
・技術者評価を審査基準日以前に6ヶ月を超える恒常的雇用関係にある者になった。(技術者
の名義借り等の不正を防ぐため)
・建設機械の保有台数を加点対象に追加
・ISO9001、ISO14001を加点対象に追加
・再生企業の大幅減点。再生期間中は-60点。再生期間終了後、営業年数はゼロ年にリセット。
※企業が再生する際に、債権カット等により地域の下請企業等に多大な負担を強いた事情を配慮したものです。
・完成工事高評点X1・元請完成工事高評点Z2上方修正
※建設投資の減少に応じて、H22年度の建設投資見込額を基に、X1、Z2評点が制度設計時の平均点である700点になるように底上げされました。
平成24年7月改正について
・雇用保険・健康保険・厚生年金保険それぞれの保険未加入の減点幅が-40点に拡大。
・外国子会社の完成工事高・利益額・自己資本額を評価の対象に追加。
平成27年4月改正について
・若年技術者(35歳未満)の雇用(新規及び継続)に各1点(W点)追加。
※平成26年6月に「鋼橋工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)が改正・施行さ
れ、公共工事において、「若年の技術、技能労働者等の育成及び確保の状況を評価すべき
努力義務が課されたことが背景として挙げられます。
・移動式クレーン・モーターグレーダー・大型ダンプ車が建機保有加点対象に追加。
平成30年4月改正について
・建設機械の保有状況 見直し
・その他評点W 最低点(0点)撤廃
・防災協定を締結している場合、15点の加点から20点に拡大。
令和2年4月改正について
・CCUSレベル4と判定の場合・・・ 「登録基幹技能者」同等のレベルとして評価し、3点
の評点を付与。
・CCUSレベル3と判定の場合・・・ 「技能士1級」同等のレベルとして評価し、2点の
評点を付与。
※CCUS:建設キャリアアップシステムについて
建設キャリアアップシステムに登録される技能者の資格と経験について能力評価を実施し、 評価は、国土交通大臣が認定した評価基準に基づき、職種ごとの能力評価実施団体が行います。
「建設キャリアアップシステム」は、技能者の現場における就業履歴や保有資格などを、技能者に配布するICカードを通じ、業界統一のルールでシステムに蓄積することにより、技能者の処遇の改善や技能の研鑽を図ることを目指すもので、平成31年4月、建設キャリアアップシステムの本格運用が始まりました。技能者は、本人情報(住所、氏名等)、社会保険加入状況、建退共手帳の有無、保有資格、研修受講履歴などを登録します。事業者は、商号、所在地、建設業許可情報を登録します。登録により、技能者には、ICカード(キャリアアップカード)が配布されます。
現場を開設した元請事業者は、現場情報(現場名、工事内容等)をシステムに登録し、技能者は現場入場の際、現場に設置されたカードリーダー等でキャリアアップカードを読み取ることで、「誰が」「いつ」「どの現場で」「どのような作業に」従事したのかといった個々の技能者の就業履歴がシステムに蓄積される仕組みとなっています。
建設キャリアアップシステムに登録した技能者に対し、個別にキャリアアップカードが配布されます。
レベル1: 初級技能者(見習いの技能者)を目安。
レベル2: 中堅技能者(一人前の技能者)を目安。
レベル3: 職長として現場に従事できる技能者を目安。
レベル4: 高度なマネジメント能力を有する技能者(登録基幹技能者等)を目安。
詳しくは、こちらの建設キャリアアップシステム(CCUS)についての記事で解説していますので参照ください
令和3年4月改正について
令和3年4月1日より、経営事項審査の審査基準の一部が改正され、建設業者による技術者及び技能者の技術又は技能の向上の取り組みの状況が評価されるようになりました。
(令和3年4月1日施行) 改正内容は下記のとおりです。
@ 技術職員数(Z1)に係る改正
○改正建設業法において新設された「監理技術者補佐」は、主任技術者となる資格を有し、
一級技士補である者(※)
○経審上は、主任技術者相当の者より上位であり、監理技術者相当の者より下位である
4点として評価。
A 労働福祉の状況(W1)に係る改正
法定労災の上乗として、任意の補償制度に加入している場合に加点に加え、中小企業等協同組合法に基づき共済事業を営む者との間の契約についても同様に加点。
B 建設業の経理の状況(W5)に係る改正
企業会計基準が頻繁に変化する中で、継続的な研修の受講等によって最新の会計情報等に関する知識を習得することが重要になってきていることを踏まえ、公認会計士等数の算出にあたって算入できる者について改正。
C 知識及び技術又は技能の向上に関する建設工事に従事する者の取組の状況に係る審査項目(W10)の新設
令和4年8月改正について
技術力(Z)の項目において、監理技術者の講習受講者を加点対象とされていますが、建設業法上専任の監理技術者として配置可能な期間と経審上加点可能な期間にずれが生じていため、加点可能な期間が変更になっています。
(令和4年8月15日以降の申請で適用)
【従来の加点内容】
監理技術者講習受講から5年間加点可能。
【改正後の加点内容】
監理技術者講習を受講した日の翌年から5年間加点可能。
例)
【従来】
講習受講:H30.2.28
加点可能期間:H30.2.28〜R5.2.27の5年間。
【改正後】
講習受講:H30.2.28
加点可能期間:H30.2.28〜R5.12.31まで。
令和5年1月改正について
経営事項審査における「その他社会性(W)」の改正が行われました。その内容の概要は以下のようになります。
(適用開始の日は、各項毎に異なります。)
1.W1-9 ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する取組の加点
W1-9 ワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する取組の審査基準及び評点について、審査基準日における各認定の取得をもって、以下の評点が追加されます。下記について、取得している認定のうち最も配点の高いものが評価対象です。(最大5点)
【令和5年1月1日以降の申請で適用】
@女性活躍推進法に基づく認定
・プラチナえるぼし認定 ・・・5点
・えるぼし(第3段階)認定・・・4点
・えるぼし(第2段階)認定・・・3点
・えるぼし(第1段階)認定・・・2点
A次世代法に基づく認定
・プラチナくるみん認定 ・・・5点
・くるみん認定 ・・・3点
・トライくるみん認定 ・・・3点
B若者雇用促進法に基づく認定
・ユースエール認定 ・・・4点
2. W1-10 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況の加点
建設工事の担い手の育成・確保に向け、技能労働者等の適正な評価をするためには、就業履歴の蓄積のために必要な環境を整備することが必要であることから、下記のようにCCUSの活用状況が加点対象とされます。
【令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請で適用】
2−1)加点の条件
下記のすべてを実施している場合に加点されます。
@CCUS上での現場・契約情報を登録している。
A建設工事に従事する者が直接入力によらない方法でCCUS上に就業履歴を蓄積できる体制の整
備をしている。
※直接入力によらない方法とは、就業履歴データ登録標準API連携認定システムにより、入退
場履歴を記録できる措置を実施していること等です。
B経営事項審査申請時に様式第6号に掲げる誓約書を提出している。
2−2)加点の要件と評点
・審査対象工事のうち、民間工事を含む全ての建設工事で該当措置を実施した場合・・・15点
・審査対象工事のうち、全ての公共工事で該当措置を実施した場合 ・・・10点
※ただし、審査基準日以前1年のうちに、審査対象工事を1件も発注者から直接請け負っ
ていない場合には、加点されません。
2−3)対象となる工事
加点の対象となる工事は、審査基準日以前1年以内に発注者から直接請け負った建設工事です。ただし、下記@〜Bを除かれます。
@日本国内以外の工事
A建設業法施行令で定める軽微な工事
※軽微な工事とは、以下の工事です。
・工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事の場合は1,500万円に満たない工事
・建築一式工事のうち面積が150m2に満たない木造住宅を建設する工事
B災害応急工事
※防災協定に基づく契約又は発注者の指示により実施された工事をいいます。
2−4) W1-10 の改正時期及び総合評定値算出係数の改正内容
当該項目追加に合わせて、P点に占めるW点のウェイトが大きく増加するため、各項目間のバランスを維持するべく、P点に占めるW点のウェイトを以下のように変更されます。
【令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請で適用】
P点に占めるW点のウェイト:14.32% → 14.40%
この結果、新設される「W1-10 CCUSの活用状況の加点」、「 W1-10 CCUSの活用状況の加点」による加点がなかった場合には、P点は、約11.25点下がることとなります。
3. W7 建設機械の保有状況の改正内容
建設機械については、地域防災の観点から、災害時の復旧対応に使用され、また定期検査により保有・稼働確認ができる代表的な建設機械の保有状況について加点評価されています。
【令和5年1月1日以降の申請で適用】
※保有について、1年7月を超えるリース契約も保有と同様に加点。
そして、今回の改正では、現在の加点対象に加え、実際の災害対応において活躍しているものの、経営事項審査上は加点対象となっていない建設機械があるため、災害対応力を適正に評価するため、加点対象建設機械が拡大されます。
@従来の加点対象
・ショベル系掘削機
・ブルドーザー
・トラクターショベル
・モーターグレーダー
・移動式クレーン(つり上げ荷重3t以上)
・大型ダンプ(土砂の運搬が可能な最大積載量5t以上)
A追加される建設機械
・ダンプ(土砂の運搬が可能な全てのダンプ)
(「ダンプ」「ダンプフルトレーラ」「ダンプセミトレーラ」)
・締固め用機械
・解体用機械
・高所作業車(作業床の高さ2m以上)
4. W8 エコアクション21の加点
環境への配慮に関する取組として、国際標準化機構が定めた規格によるISO14001の登録状況に加え、環境問題への取組を適切に評価する観点から環境省が定める「エコアクション21」の認証取得状況について加点対象に追加されます。【令和5年1月1日以降の申請で適用】
品質管理: ISO9001の認証 ・・・ 5点
環境配慮: ISO14001の認証 ・・・ 5点
環境配慮: エコアクション21の認証 ・・・ 3点
エコアクション21とは、中小企業でも容易に取り組める環境経営システムです。
エコアクション21では、必ず把握すべき環境負荷の項目として、二酸化炭素排出量、廃棄物排出量及び水使用量を規定しています。さらに、必ず取り組んでいただく行動として、省エネルギー、廃棄物の削減・リサイクル、節水、自らが生産・販売・提供する製品の環境性能の向上及びサービスの改善などを規定しています。
※認証範囲に建設業が含まれていない場合及び認証範囲が一部の支店等に限られている場合
には加点されません。
まとめ
経審の評点は、 @経営規模の認定(X)、A技術力の評価(Z)、B社会性の確認(W)、C経営状況の分析(Y) の4つの項目について評価されますが、経審の改正は、B社会性の確認(W)についての内容が最も多く、次にA技術力の評価(Z)となっています。社会性自体が多岐にわたるといこともありますが、社会の情勢などの変化にしたがって、社会性についての建設業者の評価内容も変更が必要になることだと思われます。このような変化に対応して事業活動を展開してゆくことも重要であり、経審の評点もそれによってアップするということになってゆくということなのではないでしょうか。
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