経営規模(完成工事高評点X1)について
完成工事高評点X1は、経営規模を表す指標の1つで、建設業許可を受けた業種のうち経審の受審を希望する業種について、直前の2年間(あるいは3年間のどちらかを選択)の「年間平均完成工事高」のことです。
元請か下請かは区別しません。公共工事か民間工事の区別もありません。
この工事種類別の年間平均完成工事高X1は、完成工事高の多いほうが高い評点になります。建設業者の規模(大きさ)と工事施行能力を評価するためのものとも言えます。
※平成23年4月改正 建設投資の減少により平均点が低下した完成工事高X1と元請完成工事高Z2を制度設計時の平均700点となるよう評点テーブルが補正されました。
評価できる完成工事高の金額の上限は1,000億円までになっており、金額によってどの程度の評価点の差が出るのか?に関しては、評点の計算式は、金額の低いところで評点の差が大きくなるように設定されています。具体的には概ね5億円以下の完成工事高の範囲で、金額の差が評点差として大きく出るようになっています。つまり、大多数の中小建設業者における完成工事高の差が、建設業者間の実力差として評点に反映されるということですね。
完成工事高評点X1は、 1,000万円未満から1,000億円以上までの42区分に分けて、完成工事高に応じた計算式により建設業業種区分ごとに評点が決まります。具体的な評点の値は、次の評点計算例をご覧ください。
<評点計算例>
@年間平均完成工事高が1,000万円の場合
評点X1=11×10,000(千円)÷2,000+473= 528
A年間平均完成工事高が1億円の場合
評点X1=19×100,000(千円)÷20,000+616=711
@の場合ですが、完成工事高が1,000万円に対して、50%増の500万円増加して1,500万円となった場合には、評点がどのくらい増加するのか計算してみると
評点X1=20×15,000(千円)÷5,000+493= 553
と+25ポイント(528→553)となります。
一方、Aの場合に、完成工事高が1億円に対して、同額の500万円増加した場合には、評点は、
評点X1=19×105,000(千円)÷20,000+616=716
と、+5ポイント(528→553)となります。
完成工事高の金額の差が同じでも、元の完成工事高が1,000万円と1億円の場合では評点に大きな差が出ます。
※年間平均完成工事高は1,000円未満の端数は切捨てます。
評点の小数点以下に端数がある場合は切り捨てます。
なお、年間平均完成工事高X1は、内訳として別途、完成工事高評点X1を算出するものがあります。
1.「土木一式工事」では「プレストレストコンクリート構造物工事(PC)」
2.「とび・土工・コンクリート工事」では「法面工事」
3.「鋼構造物工事」では「鋼橋上部」
を内訳として算出します。
契約後VE
契約後VEとは、契約締結後、受注者が自主的に工事内容を見直し、工事目的物の機能・性能等を低下させることなく、契約金額の低減を可能とする施工方法等の代替案を提案する制度です。
「契約後VE」による提案を行い、採用されたために契約金額が減額となった場合では、減額変更前の契約額で受審が可能です。
※契約後VEにより契約額が減額となった証明として裏付け資料が必要です。
工事高の振替
指定された業種間では、年間平均完成工事高をその内容に応じていずれかの年間平均完成工事高に含めることができます。(2年または3年の平均年数を選択内訳として完成工事高評点X1を算出します)
@一式工事の完成工事高への振替
土木一式工事、建築一式工事として発注されている工事の中には工事の内容が建設業法の工事種別で分類すると専門工事として分類されることがあります。このような場合は、決算報告(変更届出書)の工事経歴書は専門工事に計上し、工事種類別完成工事高を一式工事として計上します。これを一部専門工事の完成工事高を一式工事の完成工事高への振替といいます。
振替ができる専門業種は下の表のとおりです。
なお、振替元、振替先の業種には申請時に建設業の許可が必要です。
振替先の一式工事 | ← 振替元の専門工事 |
---|---|
「土木一式工事」 |
←「 とび・土工・コンクリート工事」、「石工事」、「タイル・れんが・ブロック工事」、「鋼構造物工事」、「鉄筋工事」、「舗装工事」、「しゅんせつ工事」、「水道施設工事」 |
「建築一式工事」 |
←「大工工事」、「左官工事」、「とび・土工・コンクリート工事」、「屋根工事」、「タイル工事」、「鋼構造物工事」、「鉄筋工事」、「板金工事」、「ガラス工事」、「塗装工事」、「防水工事」、「内装工事」、「建具工事」「、解体工事」 |
(以上の専門工事は専門工事相互の振替はできません。)
A専門工事間の完成工事高の振替
下の表の専門工事の完成工事高は、相互に関連があるため専門工事相互間の完成工事高の振替ができます。このような場合は決算報告(変更届書)の工事経歴書は振替元専門工事に計上し、工事種類別完成工事高を振替先専門工事として計上します。これを専門工事間の完成工事高の振替といいます。
振替ができる専門業種は下の表のとおりです。
なお、振替元、振替先の業種には申請時に建設業の許可が必要です。
専門工事(振替先(振替元)) | ←(→) 専門工事(振替元(振替先)) |
---|---|
「電気工事」 | ←(→) 「電気通信工事」 |
「管工事」 | ←(→) 「熱絶縁工事」 |
「管工事」 | ←(→) 「水道施設工事」 |
「とび・土工・コンクリート工事」 | ←(→) 「石工事」 |
「とび・土工・コンクリート工事」 | ←(→)「 造園工事」 |
※東京都の場合。
完成工事高評点X1の評点アップ方法
1.受注増と利益の確保
完成工事高の評点をアップする方法としては、まず当然ながら、受注量を増やして完成工事高を増やすことです。しかしながら、経済情勢によって変化を受けやすいものですので、思ったように簡単には増えるものでもありません。また、後に出てくる利益に関する指標もありますので、赤字の工事をいくら多く受注しても利益関係の評点が下がるので、結果として評点は向上しません。従って、着実に利益を確保しつつ、工事の完成高を増やす事業戦略が必要になってきます。
2.兼業の売上高を適正に計上する
剪定、除雪、調査、点検、電球・部品の交換等は「建設工事の完成を請け負う営業」という定義から外れるため、原則として完成工事高に計上することはできません。
「完成工事高に計上することはできないもの」についての詳細は、こちら
しかし、建設資材の販売を兼業としているような場合は、通常は、これらは完成工事高ではなく、兼業事業売上高とすべきものですが、販売と併せて設置工事を行った場合には、資材の金額も完成工事高とします。資材の仕入れ代金の額は、完成工事原価の材料費となるからです。
建設資材としては、生コンクリートや、機械器具設置工事での機械などの場合も同様です。これは、経審の評価点を挙げるためということではなく、本来の適正な経理処理のためですが、気づかずに工事高に計上していないということのないようにしましょう。
※建設業許可において、許可が扶養な軽微な工事が500万円未満(消費税込み)の工事ですが、これには、資材などの工事材料も含めなければなりませんので注意してください。
3.完成工事高の積上げ(振替)
「工事高の振替」のところでも解説しましたが、審査を受けない業種の完成工事高を審査を受ける業種に積上げて申請することによって評点アップさせることができます。
ただし、積上げができる業種には制限がありますので、詳しくは、上記の「工事高の振替」を参照ください。
4.工事進行基準の採用による方法
工事を会計処理の方法として「工事完成基準」と「工事進行基準」があります。
通常は、工事が完成し、竣工検査を経て引渡を受けた時点で売上(収益)計上を行う「工事完成基準」を採用することが多いと思います。
一方、「工事進行基準」は、売上(収益)計上を工事の進捗に応じて売上(収益)計上を行う会計処理です。
事業年度の期末において、未成工事(引渡しの終わってない工事)となっている工事は、通常の「工事完成基準」での会計処理は、入金額があったときは、「未成工事受入金」として流動負債に計上しますので、当然、売上げにはならず、完成工事高にも計上しません。しかし、未成工事の金額が大きい場合には、「工事完成基準」を採用することによって、工事の進捗に見合った売上(収益)を計上することができるので、完成工事高を評点をアップすることができます。
「工事進行基準」は、強制適用となる場合(長期大規模工事)と、工事ごとに任意に適用できる場合があり、それぞれ、適用するための要件がありますので、興味のある方は、以下を読んでみてください。
「工事完成基準」と「工事進行基準」について
「工事進行基準」は、強制適用となる場合と任意に適用できる場合があります。
1)「工事進行基準」が、強制適用となる場合(長期大規模工事)
以下のすべての要件を満たす工事
@ 工事着手日から、契約上の目的物引渡期日までが1年以上
A 請負対価が10億円以上
B 請負対価の2分の1超が工事の目的物引渡期日から1年を経過する日までに支払われることが定められているもの
2)「工事進行基準」が、任意に適用できる場合
「工事進行基準」が、任意に適用できる対象は、「着工事業年度中にその目的物の引渡しが行われない工事」になります。
つまり、事業年度の期末において、未成工事となっている工事が対象です。なお、請負金額の規模は適用の要件となっていません。
「工事進行基準」が、任意に適用できる場合においては、請負金額等の一定の基準をもって適用する工事ごとに要件を確認し、該当する工事ごとに工事完成基準と工事進行基準の方法を選択適用することになります。
いったん工事進行基準を選択した工事は、毎期継続して適用しなければなりません。
工事の進行割合については、工事の進行度合を示すものとして合理的と認められる方法を適用します。
「合理的な方法」とは、「工事契約に関する会計基準」や「工事契約に関する会計基準の運用指針」に示されている方法です。代表的なものに「原価比例法」があります。
原価比例法の進行割合は、「当期の発生原価/予想総工事原価」で算出されます。
経営規模(自己資本額と平均利益額X2)について
経営規模評点X2は、経審(経営事項審査)のうち、経営規模を表す指標の1つで、 自己資本額評点と平均利益額評点から、以下の式により算出します。
経営規模評点X2 = (自己資本額評点+平均利益額評点)÷2
自己資本額評点とは
経審の自己資本額評点は、審査基準日単独の自己資本額か、直前2期平均かの選択ができます。
また、自己資本額がマイナスの場合は0円とみなして評価されます。
「自己資本額」は、財務諸表の「純資産合計」のうち、新株予約権と非支配株主持分を除いたものです。
つまり、
純資産=自己資本額+新株予約権+非支配株主持分
となります。
この自己資本とは、資本金、資本剰余金、利益剰余金(ここまでを「株主資本」といいます)と「その他有価証券評価差額金」などです。
純資産の部分をイメージで分解すると下図のようになりますね。
※新株予約権とは、あらかじめ決められた価格で株を買う権利です。役員、従業員向けに発行されるストックオプションもこの一部です。
※非支配株主持分とは、連結決算での科目で、親子会社において、親会社が連結財務諸表を作成する際に、親会社ではない株主(=非支配株主)の持分を表す勘定科目です。
平均利益額評点とは
「平均利益額」は、「営業利益」と「減価償却費」の合計を、審査日単独と前年度の2年平均をとったものです。
常に直前2年平均を使用しますので、自己資本のように直近の決算のみで評価を受けることはできません。
平均利益額がマイナスの場合は0円とみなして評価されます。
平均利益額は、「営業利益」と「減価償却費」の合計ですが、「利払前税引前償却前利益」でもあります。
つまり、「平均利益額」は以下の式で計算されます。
「平均利益額」=(営業利益額+前年営業利益+減価償却実施額+前年減価償却実施額)÷2
※「利払前税引前償却前利益」はEBITDA(イービットディーエー)と呼ばれ、税引き後利益に支払利息・法人税・減価償却費などを足し戻すことにとって企業の収益力を計るものです。
経営規模評点X2の評点アップ方法
X2の評点は、自己資本の額そのものが大きいほど評点が高くなり、利払前税引前償却前利益の額がそのものが大きいほど評点が高くなります。
自己資本とは、簡単にいうと、資本金と繰越利益剰余金の合計です。資本金は増資することができますが、繰越利益剰余金は毎年の営業の利益が蓄積したものですので、そう短期間で向上するのは難しいものです。X2の評点アップは、中長期的に着実に経営指標を向上させてゆくことが必要です。
また、利払前税引前償却前利益の額は、減価償却費が大きいほど、評価が上がるので、自社の設備などの固定資産を多く保有するほうが有利になります。減価償却は経費が増加して利益が減るのですが、確実な施工能力を確保することとその設備(固定資産)をきちんと償却して計上することが肝要です。
※固定資産を持たずに施工能力のないペーパーカンパニー(不良不適格業者)が、高評価とならないようになっています。
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