「軽微な工事のみ」でも建設業の許可が必要な場合とは?
建設業の許可を受けると、許可を受けた業種について「軽微な建設工事」以外の工事(500万円以上(建築工事業は1,500万円以上)の工事)を請負うことができるようになりますが、主たる営業所又は従たる営業所として届出た営業所で営業しなければなりません。「届出をしていない営業所」において、「軽微な建設工事」を請負ってもよいのでしょうか?「軽微な建設工事」はそもそも許可がいらないのだから、届出をしていない営業所で許可を受ける前と同様に営業をしてもよいと考えてしまっていませんか?
実は許可を受けた業種については、軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、その工事業種について営業することはできません。
営業するのであれば、その営業所についても届出が必要です。
営業所毎に許可業種を分ける場合
例えば、東京都にある本社では「建築工事業」、東京都内のA営業所では「電気工事業」で東京都知事の許可を取得した場合を考えてみましょう。
この場合は、本社では「建築工事業」について、A営業所では「電気工事業」について「軽微な建設工事」以外の工事(500万円以上(建築工事業は1,500万円以上)の工事)を請負うことができるのは当然ですが、しかし、本社では「電気工事業」について「軽微な建設工事」であっても請負うことはできませんし、A営業所では「建築工事業」について「軽微な建設工事」であっても請負うことはできません。
会社として許可を全く受けていない許可業種については「軽微な建設工事」(500万円未満(建築工事業は1,500万円未満)の工事)を請負うことはできます。
具体例
先ほどの例で、本社では「建築工事業」、A営業所では「電気工事業」で許可を取得した場合に、新たに都内にB営業所を開設した場合を考えてみます。
このB営業所建設業を営むには以下の方法があります。
(1)B営業所で「建築工事業」のみを請負う
令3条の使用人、「建築工事業」に関する資格または必要な実務経験を持つ専任技術者の各1名をB営業所に配置する。
(2)B営業所で「電気工事業」のみを請負う
令3条の使用人、「電気工事業」に関する資格または必要な実務経験を持つ専任技術者の各1名をB営業所に配置する。
(3)B営業所で「建築工事業」および「電気工事業」を請負う
令3条の使用人を1名、「建築工事業」および「電気工事業」に関する資格または必要な実務経験を持つ専任技術者1名(もしくは業種毎に各1名の計2名)をB営業所に配置する。
(4)B営業所で「建築工事業」、「電気工事業」以外の工事業種を請負う
@「軽微な建設工事」(500万円未満(建築工事業は1,500万円未満)の工事)のみの営業を行うのであれば、届出は不要。令3条の使用と専任技術者も配置不要です。
A「軽微な建設工事」以外の営業を行う場合は、令3条の使用人を1名、行おうとする業種に関する資格または必要な実務経験を持つ専任技術者の1名をB営業所に配置する。
(1)、(2)、(3)の場合には、「軽微な建設工事」(500万円未満(建築工事業は1,500万円未満)の工事)のみの営業を行う場合は、B営業所は「軽微な建設工事」のみ行う営業所ということになり、許可は要らないかというと、そうはなりません。(1)、(2)、(3)の場合においては、実際に「軽微な建設工事」のみ行う営業所であったとしても、会社とし許可を受けている業種については、営業所としての届出を行い許可を得る必要があります。当然ながら、そのためには令3条の使用と専任技術者を配置しなければなりません。
上記の(4)の場合には、会社として許可を受けていない業種について「軽微な建設工事」(500万円未満(建築工事業は1,500万円未満)の工事)のみの営業を行う場合ですので、B営業所は届出は要りません。
知事許可と大臣許可との関係
ここで、B営業所が都内ではなく神奈川県だとするとどうなるでしょうか。
「営業所」が全て同じ都道府県内にある場合は知事許可、複数の都道府県にある場合は大臣許可が必要となります。
したがって、(1)、(2)、(3)の場合とも、届出ではなく、大臣許可を新たに許可を受けなければなりません。(「許可換え新規」といいます)
(4)@であれば、許可業種以外の業種について「軽微な建設工事」のみの営業なので、届出も許可換え新規も不要です。
(4)Aの場合は、大臣許可を新規に申請して許可を得る(許可換え新規)必要があります。
『国土交通大臣の許可と都道府県知事の許可の区分については、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合には国土交通大臣の許可、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする場合には都道府県知事の許可とされているが、この場合における営業所は、当該許可に係る営業所のみでなく、当該建設業者についての当該許可に係る建設業を営むすべての営業所と解して取り扱う。すなわち、許可を受けた業種について軽微な建設工事のみ行う営業所についても法に規定する営業所に該当し、当該営業所が主たる営業所の所在する都道府県以外の区域内に設けられている場合は、国土交通大臣の許可として取り扱う。』(「建設業許可事務ガイドライン」国総建第97号より)
まとめ
「軽微な建設工事」のみを営業する営業所について無条件に許可は不要ということではないので、突き詰めると複雑な構成になっていて勘違いしやすいところだと思います。営業所が1か所のみであれば悩むことはないのですが、複数の営業所を設置するということになると、営業所には建設業法に違反とならないために、どの営業所でどの業種の許可を取るのか戦略的な許可の取得方法を検討していただければと思います。
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