破産したことがある人でも建設業許可は取れる?

建設業許可取得の要件のひとつに「欠格要件」に該当しないこと」というものがあります。そしてその欠格要件のひとつに「破産者で復権を得ていない者」という内容があるのです。個人でも会社でも破産したことがある方は、これを見てやはり不安になるのではないでしょうか。しかし、破産したことがあっても大抵の場合は問題ないです。
破産をしても「復権」を得ていれば欠格要件に該当しないので、許可を得ることはできます。
それでは、この復権について、会社の破産の場合と個人の破産の場合についてそれぞれ見ていきましょう。
建設業の許可を受ける場合、会社としても、または個人事業主としてもいずれも可能です。破産という場合、会社の場合、個人の場合がありますね。会社の破産手続きの場合、「欠格要件」は人に対する要件ですから、会社が破産してもその代表取締役や取締役が破産するということではありません。しかし、会社の破産手続きにおいて代表取締役が会社の連帯保証人になっているケースは中小企業ではめずらしくありません。その場合には、会社の破産手続きにおいても個人の破産手続きとなる場合があるのです。
ただ、この記事では、破産の手続きについて詳しい説明をするのが趣旨ではありませんので、復権に関わる内容を主に取り上げていきたいと思いますので、あからじめ御承知置きをいただいてお読みください。

1.個人の破産の場合

個人の場合、つまり自己破産の場合について破産から復権に至る過程はどのような内容になるのでしょうか。
自己破産の手続きをすることで債権者からの請求を止めることができます。自己破産の手続きは裁判所で行われます。その後、自己破産が完結すれば完全に債務は消滅します。
ただ、この時個人が保有する財産についてはそのほとんどを差し押さえられ、換価処分の後に債権者に配当されます。そのため、ほとんどの財産を手放すことになります。また、自己破産をするとローンが組めなくなったり、クレジットカードが使えなくなるということもあります。自己破産後は、裁判所からカード会社を含めたすべての債権者に自己破産をしたという通知がいきますので、クレジットカードが強制敵に解約となります。
個人の自己破産では、生活に必要な一定の財産を手元に残すことができます。この手元に残せる財産を「自由財産」といいます。自由財産となるのは、以下のような財産です。
・破産手続開始後に取得した財産(新得財産)
・99万円以下の現金
・差押え禁止財産(たとえば、給料の一定額や生活に欠かせない衣服、寝具など)

 

1.個人の破産手続き
破産手続きを簡単に説明しますと、裁判所に自己破産を申し立てた後、裁判所によって、以下のいずれかで手続きを進めることが決められます。
1)管財事件(少額管財事件等も含みます)
2)同時廃止
破産手続きにおいて、財産を持っている人の場合は、その財産を処分して債権者に対して配当を行う必要があります。このように、破産手続の開始から財産の換価処分、債権者への配当という流れで進むのが管財事件です。また、債務者に関して免責不許可事由があるときも管財事件となります。「免責不許可事由」とは、自己破産で借金をなくす「免責」を認めるには不適切な事情であるということで、例えば財産を隠匿した、ギャンブルや収入に見合わない浪費による破産であるといったような事情です。このような場合には、破産管財人が選任され破産手続きが進められます。
「管財事件」でのみ、自己破産手続の期間中は居住・移動制限や通信の秘密の制限がされます。
これに対して、破産する人の中には財産を持っていないことが最初からわかっている場合には、財産の換価処分を行うことなく、破産手続の開始と同時に破産手続の廃止を行うのが、同時廃止事件です。同時廃止が認められるには、財産の額が極めて少額の場合で、20万円未満の金額が目安です。同時廃止事件となった場合は、破産手続の申立と同時に破産が決定するため、管財事件よりは、はるかに短い時間で破産手続が終結します。
「同時廃止」では、居住・移動制限はされません。
2.「同時廃止」とは?
「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。(破産法第216条)」
3.自己破産したときの資格制限
自己破産すると、さまざまな資格制限を受けます。資格制限とは,破産手続の開始によって,一定の資格を得ることができなくなり,あるいは資格を失うことをいいます。資格制限は破産法には規定されているわけではなく、それぞれの資格の取得要件等を定める個別の法律によります。
この資格制限は免責許可を受ければ,もとのとおり資格を取得したり、資格を使えるようになったりします。これを復権といいます。
建設業法での欠格要件も資格制限のひとつですが、以下に、代表的な資格制限について列挙してみます。
建設業、宅地建物取扱主任者、宅地建物取扱業、後見人、警備員、警備業者、弁護士、弁理士、行政書士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、旅行業務取扱主任者、旅行業者、廃棄物処理業者などです。このほかにも多数あります。
4.免責について
破産をするということは、裁判所に「破産手続き開始の申し立て」の手続きをすることですが、免責とは、簡単にいうと破産手続によって全財産を処分し,それでも支払いきれなかった部分は免責される(支払い義務が無くなる)ということです。また、破産手続きの中で、債務を支払う十分な財産・収入がないと判断されれば、免責となります。
破産と免責は、破産法に規定される手続きですが、あくまで別々の手続きです。自己破産の場合には,この破産手続開始の申立てと免責許可の申立ては同時に行われるのが通常です。ただし,破産手続開始の申立てしかしなかった場合でも,同時に免責許可の申立てもしたものとして扱われます。
個人破産においては、免責という手続きによって、破産法の目的である「債務者の経済的更生」を図ろうとしているわけです。
ただし、税金・養育費、個人事業主であれば,従業員に対する給料(破産手続開始前3か月間のもの)など一部の債務(非免責債権といいます)は、免責が許可されても支払い義務がなくなりません。これらの非免責債権については破産後も返済していかなければならないものです。
大事なポイントですが、免責許可決定が確定すると,「当然復権」の効果が生じ,破産手続における資格制限が解除されます。
5.復権するとは?
復権とは,文字どおり,権利を回復することをいいます。資格制限も「復権」すれば無くなります。資格制限は,破産手続が終了したとしても、それだけで制限がなくなるわけではなく、復権しなければ制限のついたままということですね。
では,いつ復権するのかというと,次の4つのいずれかに該当するケースです。これらのケースでは、裁判所に申し立てをせずに、当然に復権します。

「破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。(破産法第255条第1項より)」
 免責許可の決定が確定したとき。
 第二百十八条第一項の規定(破産債権者の同意による破産手続廃止の決定)による破産手続廃止の決定が確定したとき。
 再生計画認可の決定が確定したとき。
 破産者が、破産手続開始の決定後、第二百六十五条の罪(詐欺破産罪)について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。

※詐欺破産罪とは
債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をいいます。
 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
6.「申し立てによる復権」について
一方、復権しない人が復権するには、復権を申し立てることが必要です。
「破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。」(破産法256条1項)
親族から援助を受けて借金をすべて返済したような場合は、すべての債務がなくなった後に、破産者が復権を申し立てたときには、裁判所は復権を認めなければなりません。
7.復権を得ていることをどうやって証明するのか?
ここまで、破産手続きにおける免責、復権についてみてきました。建設業許可申請では、「破産者で復権を得ない者」に該当していないことを証明するために、身分証明書という書類を提出します。ここでいう身分証明書とは、運転免許証などのことではありません。本籍地の市区町村役場で発行してもらう証明書のことで、成年後見の有無、破産の有無などを証明するものです。身分証明書は、建設業許可申請において、会社の役員、個人事業主について提出が必要です。
もし、役員等の対象者に復権を得ていないものがいれば、役員から外れてもらうなどの対策が必要となります。(役員ではなく従業員として働くことは可能です。)

 

身分証明書について、こちらの「身分証明書とは?」で詳しく解説していますので、参照ください。

 

8.破産の手続き中は建設業許可の欠格要件に該当
過去の破産経験は全く問題ありませんが、現在手続き中であるということなら建設業許可の欠格要件に該当しますので、建設業許可の取得はできません。先に手続きを完了させるしかありません。また、破産手続き中は取締役として、あるいは個人事業主として建設業の許可を受けることはできませんが、従業員の一人として働くことには問題ありませんから、経営管理責任者の要件を満たす別の人を役員に迎えれば会社として建設業許可の申請を行うことができます。
逆に言うと、すでに建設業許可を得ている会社で、役員が自己破産してしまうと許可が取り消しになってしまいますので注意です。手続きを開始する前に役員から外すなどの対処が必要になります。

2.会社の破産の場合

それでは、会社の破産の場合についてみていきたいと思います。ここで会社というのは、株式会社や合同会社、合資会社などですが、より広い法人格の「法人」も同様です。
1.会社(法人)破産では「免責」は無い
会社(法人)の場合には「破産」しても「免責」されないので「破産によって債務が免除される」ことはありません。ただし、法人が破産すると、法人そのものが消滅するため、債務自体も消滅します。「免責」は無いのですが「債務の返済義務が残る」わけではありません。会社(法人)破産の場合、会社(法人)が消滅してしまうからです。事実上、免責と同じことになります。ただし、個人(自然人)の破産と異なり、会社(法人)の場合には税金等の支払いも無くなります。
会社(法人)の財産は「すべて」換金されて債権者に配当されるので、個人の自己破産ように「自由財産(破産しても本人の手元に残る財産)」はありません。
2.必ず破産管財人が選任される
会社破産の場合には「同時廃止」がなく「管財事件」しかありませんので、破産手続き開始決定と同時に必ず破産管財人が選任されます。管財人が選任されると、管財人に対して会社の財産や負債、帳簿などの資料をすべて引き渡します。その後は会社に届いた郵便物はすべて管財人に届くようになります。あくまで破産者である会社(法人)宛ての郵便物だけで、代表者や役員個人に対する郵便物まで管財人に転送されるわけではありません。
管財人は財産の換金処分の後、債権者集会を行い、債権者に対する配当を行います。そして法人が消滅し、裁判所書記官の職権によって破産手続き廃止や終了の登記が行われ、会社の登記も閉鎖されます。
※破産管財人によって管理処分されるべき財産(基本的に処分の対象となる財産)のことを「破産財団」といいます。
※破産者である法人・会社は、すべての財産について処分することはできなくなります。
3.代表者・役員は退任
破産手続開始の決定を受けたとき、株式会社が解散したときは、取締役はその地位を失うことになります。
これは、株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う(会社法第330条)となっているからで、委任の終了事由は、民法に定められています。
ここでの、委任という意味は、会社が取締役に経営を任せること、取締役が会社の経営を行うことをいいます。

委任の終了事由(民法653条)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
 受任者が後見開始の審判を受けたこと。

この中で、「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けた」場合、つまり会社が破産手続き開始の決定を受けたか、役員個人が自己破産して破産手続き開始の決定を受けた場合には、委任は終了してしまいますので、役員の地位は失われるということです。
ちなみに役員というのは、会社法における株式会社では、取締役・会計参与・監査役のことを指します(会社法第329条)。
また、会社法施行規則では、会社役員とは、当該株式会社の取締役、会計参与、監査役及び執行役をいいます(会社法施行規則第2条第3項第4号)。
このように取締役の地位は無くなりますが、しかし、その役割を直ちに失うというものではありません。その理由は以下のように破産法上、管財人等に対する説明責任があるからです。
この中で、「法人の理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人」は、破産に関し必要な説明責任を負っています。

(破産者等の説明義務)破産法(第40条) 
次に掲げる者は、破産管財人若しくは第144条第2項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第五号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
 破産者
 破産者の代理人
 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
 前号に掲げる者に準ずる者
 破産者の従業者(第二号に掲げる者を除く。)
2 過去にこれらの者であった者も、説明義務を負担している(破産法40条2項)。

4.役員等の居住制限について
上記のように、会社(法人)の破産手続においては、その会社(法人)の役員等に対して説明義務が課せられているわけですが、そこで、この説明義務の実効性を確保するため,破産者の理事・取締役・執行役・これらに準ずる者は,裁判所の許可を得なければ,居住地を離れることができないものとされています(破産法39条,37条1項)。
ただし,日本国内で、裁判所などへの出頭が可能で、破産管財人との連絡も容易にとれる場所であれば、基本的には許可されると考えておいてよいでしょう。
居住制限の他にも、重要財産開示義務(破産法41条)や,債権調査期日への出頭および意見陳述義務(破産法121条3項,5項,122条2項)などの法的義務が課せられます。
5.会社が破産すると代表者・役員も破産?
会社と代表者個人は異なる人格であり、会社の債務がそのまま代表者の債務となるわけではないので、会社が破産しても代表者や役員が破産しなければいけないわけではありません。ただし、経営破綻に瀕しているような会社の場合、会社の代表者が会社の債務の連帯保証人になっていることが多く、そのような場合においては、代表者が個人の財産で会社の債務を返済できればよいのですが、返済が不可能なときは、代表者個人も破産せざるを得なくなります。
6.代表者の家族への影響は?
会社が自己破産することにより影響が及ぶのは通常、会社と経営者のみであり、ご家族がその連帯保証人であるような場合を除き、破産の手続きによるご家族への影響は皆無です。すなわち、ご家族の財産については、破産管財人に提供する義務もなく、換価回収などがされるといったことはありません。
7.破産後の起業
会社の破産において、その手続きが終了すれば、その会社の代表者・役員であった者は、再度起業することができます。個人の破産においては、、前述した特定の職業に就く資格は裁判所の免責許可が下りるまで失うことになりますので、免責許可が下りれば、どのような職業にも就くことができます。
再度、企業して会社の代表者や役員になる場合はどうでしょうか?
会社の取締役は、個人の自己破産の手続中(3〜6ヵ月程度)に一定の職業に就くことが制限される「資格制限」の対象ではありません。しかし、前述のとおり、会社が破産した場合や取締役個人の方が自己破産をした場合、取締役を退任しなければならないので、破産手続き期間中は、別会社を企業して代表者・役員になることはできませんが、手続きが終了すれば、その後に再度の会社の代表者や取締役になることは禁止されていませんので可能です。ただし、金融機関によっては破産したことで融資を受ける際に不利となることもあるので、留意しておきましょう。
8.復権した後で許可申請するには?
復権した方が、個人事業主として建設業許可を申請する場合や、会社の役員で経営業務の管理責任者として申請する場合に、建設業に関する5年以上の経営経験の証明が必要になってきます。この証明期間が建設業許可を受けていた期間である場合は、いいのですが、建設業許可の無い期間が含まれている場合には、経営経験の証明資料として、工事請負の契約書、請求書や、決算書や確定申告書などが必要となるのですが、破産手続きにおいて、提出してしまい残っていないというようなことがあり得ますので、その場合は、せっかく復権していても許可要件の立証資料がそろわず申請できないということになってしまいますので、コピーでもいいので必ず資料を残しておくようにしましょう。

 

 

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