経審の評点アップ対策について解説します

公共工事の入札に参加するために、経営事項審査(経審)の受審が必要になります。そこで、「経営事項審査の評点を上げたい!」とお考えの建設業者の方に経審の評点アップ対策について解説します。

経審の評価項目

それでは、経審(経営事項審査)ではどのような点について評価されるのでしょうか?
経審は、建設業許可業種区分ごとに総合評点Pで評価します。そして総合評点Pは、以下の各評価項目をベースに計算されますので、それぞれの内容を詳細に検討してどのように点数アップを狙えるかを検討する必要があります。
そこで、今回は経審の点数がどのように計算されるかを確認しながら、点数がアップする具体例についても解説します。

【経審の評価項目】

評価項目 評点の範囲(最低点〜最高点) 評価の単位
X1:完成工事高 397点〜2,309点 工事業種毎に評価
X2:経営規模(自己資本額および平均利益額) 454点〜2,280点 法人単位で評価
Y: 経営状況分析評点 0点〜1,595点 法人単位で評価
Z: 技術力(技術職人数および元請完成工事高) 456点〜2,441点 工事業種毎に評価
W: その他審査項目(社会性等) ー1,838点〜2,528点 法人単位で評価

 

総合評点P:
P点=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15

-18点〜2,396点 工事業種毎に評価

X1 完成工事高
X1は、完成工事高を用いて経営規模を表す評点で、業種別の完成工事高を1,000万円未満?1,000億円以上までの42区分に分けて評点を計算します。評点に使う平均完成工事高は、2期分または3期分の平均によって計算することになります。2期平均、3期平均の選択は任意で行えるため、実際に計算をしてみてより金額の大きくなる期間を選ぶことができます。
X2 経営規模
X2は経営規模を表す評点で、「自己資本額点数」と「平均利益額点数」から点数を計算します。「自己資本額点数」、1期分または2期分の平均の自己資本額、「平均利益額点数」は、 2期分の平均の利益(利払前税引前償却前利益)の額になります。
Y 経営状況分析
経営状況分析Yは建設業財務諸表を元に、以下の各項目が計算されます。経営状況分析Yは、建設業法の規定に基づき、国土交通省の登録を受けた機関(登録経営状況分析機関)に分析を依頼して分析結果を入手するものです。
・純支払利息比率
・負債回転期間
・総資本売上総利益率
・売上高経常利益率
・自己資本対固定資産比率
・自己資本比率
・営業キャッシュ・フロー
・利益剰余金
なお、建設業財務諸表は、税務申告の決算書とは、細かい相違点がありますので、通常は、決算書から建設業財務諸表に作り変える必要があります。
Z 技術力
技術力Zは技術力を表す評点で、2期分または3期分の平均元請完成工事高と、技術職員が保有している資格・技術職員数から計算されます。
平均元請完成工事高については、「X1 完成工事高」で選択した期間と同じ期間となります。
Zの評点は、(技術職員の数の点数×0.8)+(元請完成工事高の点数×0.2) で計算します。
W その他(社会性等)
W点ではその他の評点として、以下の8つの点から点数を計算します。業種とはリンクしておらず、法人単位での評価となります。
W1 担い手の育成及び確保に関する取組の状況
W2 営業年数
W3 防災協定の締結の有無
W4 法令遵守の状況
W5 建設業の経理の状況
W6 研究開発の状況
W7 建設機械の保有台数
W8 国または国際標準化機構が定めた規格による認証または登録の状況
 (ISO、エコアクション21)

 

経審の評点アップの方法

各評点の点数は、「算出テーブル」と呼ばれる表や細かな計算式によって計算されますが、いくつかのポイントを押さえておけば点数アップが期待できます。
1) X1 完成工事高とX2 経営規模
X1の評点は、
年間平均完成工事高の評点の範囲:397点〜2,309点の範囲です。397点は、年間平均完成工事高が0の場合の評点です。(完成工事高がゼロでも0点ではなく、点数がつきます。
X2の評点ですが、元になる「自己資本額」「平均利益額」については、自己資本額の評点の範囲:361点〜2,114点の範囲です。
361点は自己資本額が0の場合の評点です。(実際はこのようなことはないと思いますが)
平均利益額の評点の範囲:547点〜2,447点の範囲です。547点は平均利益額が0の場合の評点です。
X2の評点は、(「自己資本額」+「平均利益額」)÷2で計算しますので、
X2の評点の範囲:454点〜2,280.5点の範囲となります。

 

X1とX2の元になる「完成工事高」「自己資本額」「平均利益額」は、いずれも、工事の売上、自己資本、そして利益の額の大小(多寡)で決まりますので、当然ながら、これらの数字が大きいほど点数は高くなります。従って、地道に受注を増やし、利益を出してゆくというのが基本になります。利益が毎年、積みあがれば利益剰余金が積み上がり、結果として自己資本も増えます。
ただし、完成工事高を上げようとして利益が薄い工事や赤字工事を受注するのは、たしかに完成工事高が上がればX1の数字は高くなりますが、一方で利益が悪化するためYの数字が低くなってしまいますので、要注意です。
短期的な大幅アップを図る方法はないのか?ということですが、場合によっては完成工事高を増やすことが可能です。それは、工事業種の振り替えという方法が経審では認められているからです。

 

2) Y 経営状況分析
Y経営状況分析の評点の範囲:0点〜1,595点
となります。

 

3) Z 技術力
Z技術力の評点は、(技術職員の数の点数×0.8)+(元請完成工事高の点数×0.2) で計算しますが、
技術職員の数の点数の範囲:522.4点〜2,335点 510点は技術職員が1人の場合の点数。
元請完成工事高の点数の範囲:241点〜2,865点
ですので、Zの評点の範囲:658.9点〜2,441点
となります。

 

ここでは、元請(施主から直接受注した工事)での完成工事高が評価対象となります。
技術者の評点のアップ方法としては、技術者一人あたり「2業種まで」評価の対象となりますので、新たに資格を取得させる、上位の資格を取得することを検討する
一級技術者に「監理技術者講習」を受講するといった方法が考えられます。
※監理技術者講習の有効期間は5年間なので、審査基準日の時点で期限切れになっていることがないようにしましょう。
なお、技術者を新たに採用する場合は、6か月を超える雇用関係が必要となりますので、この点も注意してください。

 

4) W その他(社会性等)
Wその他(社会性等)の評点の範囲:ー1,838点〜2,528点です。
加点と減点の振り幅が大きいことが、Wその他(社会性等)の評点の特徴といえます。
減点がつかないようにして、加点を増やすことが重要になってきます。そこで、まずは減点のほうですが、減点があるのは以下の3項目です。
・「W1 担い手の育成及び確保に関する取組の状況」において、社会保険(健康保険、厚生年
 金保険、雇用保険)のいずれかの加入が無い場合には減点となります。
・「W2 営業年数」において、営業年数が増えるに従って点数は高くなります。しかし、民事
 再生法または会社更生法の適用があり、手続きの終結のない場合には減点となります。
・「W4 法令遵守の状況」において、審査対象年に建設業法第28条の規定により、指示又は
 営業停止命令を受けた場合には減点となります。

 

次に加点のほうですが、以下のような点に留意すると点数は上がってきますが、その対応のための時間的・人的リソース、コストとの兼ね合いということになろうかと思います。
比較的高い加点が期待できる方法としては、以下が挙げられます。
@建退共または中退共などの退職金制度や企業年金制度の適用
A法定外の労災補償制度への加入
Bキャリアアップシステム(CCUS)の適用
CCDP単位の取得
Dワークライフバランスの取組(えるぼし、くるみん、ユースエール)認定
E防災協定の締結
FISO9001、ISO14001の認証・登録
これらをまったく適用していない場合と、すべて適用している場合とでは差が出てきます。

 

まとめ

経審の点数(P点)にはX1点・X2点・Z点・Y点・W点という5つの要素が複雑に関係しており、計算方法も複雑です。今回は各要素ごとにおおまかな加点のポイントを紹介しましたが、どの要素を加点できるかは事業者の経営状況や社内事情によって変化します。公共工事の入札に向けて経審を受ける場合はそれぞれの要素を細かく検討してシミュレーションを行い、「最も有利な条件」で申請を行うようにしてください。

 

注)なお、これらについて、経審での評価対象となるためには、細かな条件がありものがあり、これらを満たせる必要があります。

 

 

 

 

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